売上4年で3倍、それでも利益33億円 — 再エネ事業者は「今の損益」で読めない
レノバの売上は292億→876億円。この会社を大手と同じ物差しで測ると、何もかも見誤る
再エネ専業2社の5年間を、あえて大手と同じ表で並べてみます。
| 22/3期 | 23/3期 | 24/3期 | 25/3期 | 26/3期 | |
|---|---|---|---|---|---|
| レノバ 売上収益 | 292億 | 336億 | 447億 | 702億 | 876億 |
| 同 純利益 | 16億 | 27億 | 89億 | 27億 | 33億 |
| イーレックス 売上収益 | — | — | 2,450億 | 1,712億 | 1,692億 |
| 同 純利益 | — | — | ▲213億 | 21億 | 53億 |
出典:各社有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」(EDINET、当サイト各企業ページの業績ハイライトと同一データ)
レノバの売上は4年で3倍。ところが純利益は16億→33億円と、東邦ガスの10分の1の水準を行き来しています。売上876億円・利益33億円の会社が、なぜ市場で「注目銘柄」であり続けるのか。ここに再エネ事業という業態の特殊な読み方が詰まっています。
1. 仕組み — 再エネは「先に全部払う」ビジネス
太陽光・風力・バイオマスの発電事業は、収益構造が極端に前傾しています。発電所の開発には、用地取得・環境アセスメント・系統接続・建設と数年がかりで巨額の資金を先に投じ、売電収入はすべてが終わった後から、20年単位でゆっくり回収する。つまり成長している最中の再エネ事業者ほど、費用(開発・金利・減価償却)が先行して利益が薄く見える構造です。
だからこの業態の評価軸は、今期の純利益ではなく「開発パイプライン」——計画・建設中の発電所群の容量と稼働予定時期——に置かれます。レノバの売上が292億円から876億円へ伸びてきたのは、まさに過去に仕込んだパイプラインが順次稼働してストック収入に変わってきた過程で、損益計算書は数年前の意思決定の「結果発表」にすぎないわけです。
2. 実データで答え合わせ — 制度と市況の二重リスク
とはいえ、パイプラインさえ見れば安心という話でもありません。表のもう1社、イーレックスの24/3期の▲213億円という大穴がそれを教えてくれます。
イーレックスはバイオマス発電と電力小売を組み合わせた事業者で、燃料(輸入バイオマス燃料)と卸電力市場(JEPX)の両方の市況に晒されます。この時期はバイオマス発電事業の採算悪化に伴う減損損失などが響きました(詳細は同社開示資料をご確認ください)。再エネは「作れば売れる」FIT時代の安定ビジネスから、燃料・市場・制度の三方向のリスクを自分で管理する事業へ変わりつつある——▲213億円はその転換期の授業料と読めます。
制度の変化も進行中です。固定価格で全量買い取るFITから、市場価格に連動しプレミアムを上乗せするFIPへの移行が進み、新しい案件ほど「市場で売る力」が問われます。同じ再エネ専業でも、FIT比率の高い既存資産で守るのか、FIP・コーポレートPPAで攻めるのかによって、リスクの性質がまるで違ってきます。
出典:FIT・FIP制度(再生可能エネルギーの固定価格買取・市場連動) 資源エネルギー庁
3. 読みの作法 — 3つの数字で立体視する
再エネ事業者を読む実務的な作法は、①開発パイプライン(決算説明資料に必ず載る。総容量だけでなく「確度区分と稼働年度」を見る)、②稼働済み資産の質(FIT単価と残存年数、設備利用率)、③財務の持久力(先行投資を支える有利子負債と資本コスト)の3点です。純利益は最後にちらっと見るくらいでちょうどいい。
もうひとつ、業界文脈の視点を足すなら——再エネはもはや専業だけの土俵ではありません。東京ガスが系統用蓄電池を積み上げ、ENEOSや商社が再エネ電源に投資する時代です。資本力で圧倒的に勝る大手が参入してくる中で、専業事業者の武器は開発の目利きとスピードに絞られていく。パイプラインの「量」だけでなく「どの技術・どの地域で勝つ設計か」を見るのが、これからの読みどころです。
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